2025/04/12 10:55

これまでユーコンの魅力をたくさん伝えてきましたが、今回は極めつけ、そう、オーロラのお話です。
オーロラの発生は太陽の活動と深い関わりがある。その発生メカニズムは完全に解明されていないが、大凡(おおよそ)のことはネット上に溢れているので興味のある方は検索してみよう。僕は年間を通じて、ユーコンとアラスカ州のオーロラ予報をチェックし、オーロラ活動が活発だった日を記録している。太陽の活動は周期的なので、これで概ねの傾向を把握することができる。毎年恒例行事になっている九月のユーコン訪問だが、その日程を決める時の参考にしているのだ。もちろん雨だったり天気が悪ければ、オーロラを見ることはできない。だからよほどのことがない限り、最終的な日程は直前に決めることにしている。
極北でオーロラを観測できるのは8月下旬から4月上旬くらいまで。オーロラは年中出ているが夜が明るい白夜には見ることはできない。それと「寒くないとオーロラは出ない」と考えている方も多いようだが、これもまったく関係ない。天候が安定する冬場のツアーが多いので、こんな誤解が広がってしまったのだろう。9月ならばマイナス30℃の極寒に耐えながらオーロラを待つ必要はない。それでも、雪が降ることもあるので、日本の冬支度くらいに整えていると安心だ。

オーロラが出る時間は日が暮れてから明け方まで。11時ころからオーロラタイムはスタートする。終わりは何時になるか分からない。一晩中待ち続けることもあれば、日が暮れた瞬間からオーロラ爆発が起こることもある。何時間も待った末にオーロラが数分だけ出ることもあれば、もちろん何も起こらないこともある。
オーロラを見るだけならば街の中でも良いが、少しでも好条件で見ようと思えば一切の灯りがない郊外が良い。因ちなみに現地ツアーの場合は、ガイドが運転する車に乗って郊外のポイントまで小一時間のドライブをする。翌日のこともあるから、終了時間は決まっている。最近はツアー延長というシステムがあるようだが、それでもエンドレスというわけにはいかない。
宿を取っていても、何時にベッドに潜り込めるかはまったく分からない。おまけに、観察地点までの往復時間も加わるのだから、いかに時間を無駄使いしているかが理解できるだろう。だから、オーロラを見るならキャンプ(あるいは野宿)がお薦めだ。
そして大事な注意事項がもうひとつ。オーロラを見るならばひとりが良い。そして何もない荒野であれば尚のこと良い。夜空を切り裂くようなオーロラの下で、驚きと、時には恐怖さえも感じるだろう。
地球の歴史が始まってから変わることのない出来事、太古の昔、我々の祖先が見た景色と同じ景色を見ることになる。決して感動を声にしてはいけない。感動はじっと溜め込むことで、より味わい深いものになる。
ユーコンにはたくさんのキャンプ場が整備されている。九月にはほとんど利用する者がいないので予約をする必要もない。キャンプ場に到着したら好きなテントサイトに陣取り、入り口のポストに利用料金の入った封筒を入れるだけだ。
トイレもクッキングスペースも完備されている。トイレには常に充分な量のペーパーも置いてある。サイトには簡単なバーベキューサイトも用意されていて、薪も用意されている。こんな便利な施設、利用しない手はないだろう。
私の場合は、半径数十キロに誰も住んでいないような場所でオーロラを見るので、適当なスペースにテントを設営する。これはキャンプというより、限りなく野宿に近い。それが許されてしまうのもユーコンなのだ。
ユーコンは手つかずの大自然が広がっている。日中はトレッキングやカヌー、マウンテンバイク、パラグライダーを楽しむ。その途中で野生動物に出逢うことも多い。夜は満天の星とオーロラを見上げながら、時空を超えた感動を味わう。
オーロラは一億五千万キロ離れた太陽からのメッセージ。
あなたはオーロラから何を感じ取るだろう?