2024/12/06 10:05

ユーコナー(ユーコンに住む人)
夏のユーコンを訪れた旅人は、土地柄や人々の優しさに魅入られてユーコンに移り住む人も多い。ところが厳しい冬を迎えると、ユーコンを去ってしまう人が少なくない。それほど冬の生活は厳しく、地元の人々は「冬を乗り越え初めてユーコナー(ユーコンに住む人)になれる」と口をそろえる。冬のユーコンを体験してみたい。氷の大地に降り注ぐオーロラも見てみたい。できることなら季節移動で南下しているカリブーの群を目撃したい。2009年12月20日、そんな思いで僕はユーコンに旅立った。州都ホワイトホース到着すると、いつものようにレンタカーをピックアップ。

ホワイトホース周辺で用事を済ませ、クリスマスイブの朝、北に向けて移動を開始した。まずは540km北にあるドーソンへ。日本のようなドカ雪ではないので、初めての冬のドライブでも快適だ。レンタカーを借りても直ぐにホワイトホースを離れないのには理由がある。ひとたび離れてしまうと周辺には満足な施設はないも同然、レンタカーの調子をチェックする大切な時間でもある。
-30℃以下で、カリブーに遭遇
冬のドーソンはまるで死んだ町のようで、外を歩く人影もない。曇天でオーロラも空振りに終わった。天気の巡り合わせも悪く、今回の旅はどうもしっくりこない。ドーソンで一泊し、次の目的地は北極圏まであと数十キロの場所にあるイーグルプレインズへ。
朝10時(この時期、一日の日照時間は4.5時間弱なのでまだ真っ暗)にデンプスターハイウェイに入り、未舗装路の雪道ドライブが始まった。途中、車を降り雪原を歩きながらカリブーを探す。場所を変えながら、何度か歩くうちに遂にカリブーの大群を発見した。アラスカとユーコン準州の一帯を季節移動しているカリブーの群れをホーキュパイン・カリブーといい、2001年の調査では123,000頭が生息しているとされている。数十から数百、数千、時には数万の群れを作り、雪の下の苔類を食べながら移動する。今回の群れは200~300ほどだろうか。
クリスマスイブのSOS
あれこれ寄り道しながらのドライブだったので、イーグルプレインズに午後遅くに到着。ところが安心して緊張感が緩んだのでしょう、ブレーキを強めに踏んでしまった。車はス~と滑り出し、道路からはみ出し路側に突っ込んで止まった。目的地の真ん前だったのは、不幸中の幸い。助けを呼びに行くと、まさにクリスマスディナーが始まるところだった。事情を話しレッカー車で救出してもらい、そのままディナーに仲間入りした。宿泊客は自分だけ、なんとも不思議なクリスマスの一夜になった。
北極海へ
念願叶いイヌヴィックで初オーロラ。ホワイトホースから1221kmと少々遠かったが、来た甲斐があった。2日間、凍った川のイスロードドライブとオーロラ撮影を満喫したが、その先の景色が知りたくてたまらない。この道を北上すれば、194km先に北極海に面したタクトイヤクトゥクがある。
最北の集落でオーロラが見たい。北極海のボーフォート海を見たい
。ここまで来たら行くしかないでしょ! 帰国便まで9日間、凍った北極海のアイスロードをドライブしてタクトイヤクトゥク往復、この計画に無理はない・・・と判断したのだが。


ドキドキの194km
翌朝、暗闇の中、タクトイヤクトゥクへ向けて出発。アイスロードのドライブは刺激的だ。行き交う車は少ない。先住民のピックアップトラックは100m/hくらいのスピードで爆走するなか、自分は小さな吹きだまりを確認しながら30km/hでのろのろ運転。途中、吹雪に見舞われ視界はゼロに。緊張ドライブの末、トゥクトヤクトゥク に到着した。

初めて訪れた辺境の町は、何から何まで驚きの連続。そして、待ち構えていたのは・・・次回、に続きます。肝心のボーフォート海だが、氷に覆われただの氷原だった。


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